日本財団 図書館


 

分娩に携わる者に対するニーズは、初産婦でケアニーズが高く、特に「施設・設備の説明」「診察・処置の事前説明」「お産の進み方や母児の健康状態・見通しの説明」「話をゆっくり聞いてほしい」「出産時の呼吸方法」「身の回りの世話」「プライバシーを守ってほしい」の項目で希望が高かった。また、出産の方針や処置について医師や助産婦にまかせたいは、初・経産共「そう思う」に近く、両者間の差はなかったが、経産婦は初産婦より有意(P<0.01)に希望を伝えていた(仮説7の結果参照)。

 

9. 仮説9:(満足のいく出産をしたいと思っているであろう)
満足な出産に対する考えを5段階評価(非常にそう思う5−全くそう思わない1)の平均値でみると、「余分な不安を抱かないお産」4.60、「気持ちに余裕あるお産」4.55、「女性に生まれて良かったと思えるお産」4.26の順であった。初・経産婦とも「そう思う」傾向が強く、特に「不安を抱かない、気持ちに余裕のあるお産」を希望し、初産婦は経産婦よりも有意(P<0.01)に強く希望していた。さらに、学歴別では「よく頑張ったと言えるお産」「自分にとって恥ずかしくないお産」で中・高卒の方で有意(P<0.01)に強く希望していた(表10)。

 

10. 仮説10:(出産直後に児との接触を希望する人が多いだろう)
出産の直後に赤ちゃんを抱いたり、おっぱいを吸わせたいかどうかの問いに対しては、「はい」1602名(81.0%)、「いいえ」67名(3.4%)、「考えていない」308名(15.6%)であった。81.0%の妊婦が分娩直後に児との接触を希望していた。

 

?Y. 考察
1. 仮説1:(分娩環境は、すでに受診している施設を選択した理由がニーズと一致するであろう)
施設別では、病院に対しては緊急に対応できることを期待しているのに対し、診療所に対しては評判がいいことと、入院設備の充実を期待していることが明らかになった。また、助産所に対しては、夫立ち合い分娩のもとに自分の考えているお産ができることを期待していることが明らかになった。これらの項目(表1、表3)の殆どは施設闇に有意差が認められ、出産場所を選んだ理由がニーズと一致していた。
「入院設備が充実している」で診療所が高率であったが、これは4、5年から10年以内に開設された新しい診療所が多いこと。また、自由に24時間家族が出入りできるシステムを取り入れている診療所があったことなどによると考える。3施設に共通していえることは、費用より安全性を重視して施設を選択していることであった(表1)。
さらに初・経産別では、初産婦は評判で出産施設を選択し、経産婦は自分の考えているお産ができる、入院施設の設備(部屋等)の充実で出産施設を選択していることが明らかになった。山本ら11)は満足なお産は、医療関係者の言動に関係するのではなく、対象のニーズに一致した援助であると述べている。援助者である我々は、施設を選択した対象のニーズを十分考慮し、対象がより満足のいく主体的出産ができるよう援助する必要があると考える。

 

2. 仮説2:(分娩方法は、なるべく何もしない、自然な出産を希望するであろう)
分娩方法については、なるべく何もしないで自然にが全体の89.6%を占め、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION